生涯録

16歳の熱をいつまでも since2013

皮膚科

定時であがって、皮膚科に行った。
17:50に入って、診療が終わって薬をもらうまでに3時間かかった。

定時であがったはずなのに、帰宅したのは21:00だ。
もちろん待っている間に国家試験対策を進めた。

長時間待ったものの、待つだけの価値ある良い医者がいる。
きちんと患者の話を聴き、応じてくれる。洗練された誠実な対応と、良い処方。
待っている間、僕の横に座っていたのは、グラマーな体型をした、感じのいい女の人だった。彼女の薬指にある小さくてきれいな石が照明の光を鮮やかに反射していた。青いワンピースに身を包んだ髪の長い女性だった。

微かに漂う汗と爽やかなフレグランスとが混じった独特の甘い匂いが鼻孔を刺激する。めまいがした。

暗記、計算、思考に飽きると、僕は本を閉じ、目を閉じ、妄想に耽ることにした。内容は省く。

その女の人も僕と同じくずいぶん長い間待っていた。僕のひとつ後にきて、ひとつ先に呼ばれたので、だいたい三時間近くは待ったはずだ。

僕は、長時間隣り合って座っているうちに、自分たちがまるで恋人であるかのような錯覚を持った。

長いこと付き合い、互いに互いのことをよく知り、来るべき何かに対して穏やかな沈黙を共有しながら待っているような心持ちがした。

そしてそれは僕に春の陽だまりを思わせた。僕はその陽だまりのなかで静かに目を閉じ、風の音を聴いている。

やがて彼女は看護士に呼ばれ、部屋に入っていった。少しして戻ってくると、彼女は何の留保もなしに、荷物をさっとまとめて会計を済ませ、病院を出て行った。

なんでもないことだ。
当たり前のことだ。

ただ僕にはそれが寂しかった。
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